冷たい手、優しい手。
私を触る手はとても冷たくて、それでも優しくて。だから私は勘違いをしてしまいそうになる。愚かな事に。私の頬を触れる手。何をそんなに楽しいのか、先ほどからじっと座ったまま、動けないで居る。何がそんなに楽しいのか、アメリカさんは私の頬を触り続けている。先ほど、と言ったが一体いつまで続いているのかが判らない。けれど私を見ている表情は優しげで。けれど時々その瞳に奥に僅かな影が見え隠れてしているのだ。

だけど私は狡いからそんな眼を見ても見えない振りをして、ただこの冷たくて優しい心地良い手が欲しくて黙ったままで居る。何を見ているのか分かっているのに。きっとこの人は私の事が。

「…!どうしたんだい、日本?」

驚いたように私の事を見て、それから自分の手を見て、頬に触れていた手が離れようとする。どうしてこんな風に私の心配をするのでしょうか。私は、大丈夫なのに、どうして心配されるんでしょう。そもそも如何してこの人は、こんなにも私を気遣ってくれるのでしょうか。そんな風にされたら思い上がってしまう。貴方を傷つけた事が許されるなんて、思ってしまうじゃないですか。仕方の無かった事だった。自分を守るためだった。けれどその結果、貴方に傷を負わせたと云う事は紛れも無い事実なんです。ああもう、なのに私は、この人の事が。

離れていく手のひら。離したくなくてその優しさが離れていくのが嫌で、気が付けばその腕を掴んでいる。困ったように私を見て、それから何も無かったように忘れたように笑ってくれる。そして再び優しさと冷たさが私を撫でる。嗚呼、なんて心地が良いんでしょう。そしてなんて贅沢。其の笑顔に似合う表情では決して無いのだろうけれど私のなりに笑ってみせた。








零れ落ちる懺悔には見ない振りをして。