小爆発でも起こったような音がすれば体は壁に押し付けられていた。冷たい手は首にあって、まるでそのまま引き千切ってしまうかのように日本の首を掴んだ。激痛がどんなに走っても声を上げる事も、辛そうな顔をする事さえも拒む。そうしてしまえば思い通りになってしまうのは、そう、目に見えているからだ。
軋むような音、僅かな隙間を通って体に入り込んでくる酸素を頼りにしながら瞳は鋭くアメリカを見た。睨む、等と云う優しい表現では無く刺すように。優しく、冷たく。暖かい物時として絶対零度を持つ狂気となる。そしてそのままにっこりと、品の良い笑みが浮かぶ。

「楽しいですか」

声にならない声で呟いた。言葉が伝わったのかそうでないのか、判らないままに手が飛んできた。白い肌に赤い跡。けれども日本は一瞬顔を歪ませただけで、すぐに表情は元に戻る。ただし完璧にとは言わない、その笑みは濃くなった。声にはならない筈の笑いは、音となって武器となる。恐怖に、変わる。
可哀想な、子。笑い声を消そうと、幾度も頬を打つ音も日本には彼を哀れむ材料としかならなかった。楽しい訳が無い事を知りながら聞く。日本の眼に映る表情は恐怖に慄く今にも泣き出しそうな、脆弱な子供の物だった。哀れみと蔑みの篭った視線で、子供を見つめた。朦朧とする意識の中で、また想う。

可哀想な、子。愚かな子供。暴力に訴えるすべしか知らないなんて。殺意に満ちた瞳を向けた所で、誰も貴方の物になんかなる訳が無いと云うのに。だから私を見て、絶望して、どうにもならない事を嘆けば良い。本当は何一つ持っていない事に気付いて、早く絶望して。そして私に縋るような瞳を見せてくれたら、その時私は貴方の物になりましょう。






一抹の星を抱いて夢を見る













(080217)