其れは不定期に訪れる儀式のようなもので避ける事は出来ない決まりだった。誰かによって振り回されるのは御免なのにその決まりだけは破る事は出来なかった。僕等はその決まりの中で生かされていて、その決まりの中でしか生きる事が出来ないから。でも其れを哀しいと思うことは無くて、僕等なりに楽しんで生きてきた。
撃ち合うのは、楽しい。斧を振り回して首をちょんぎるの方がスリルが楽しいけれど、撃ち合うのもなかなか。すぐに終わっちゃうのが詰まらないけど其れも決まりの一つだから仕方無い。人を殺すのに罪悪感も戸惑いも必要なかった。誰かを殺す時の斧の輝きが綺麗で。そして血に染まるのはとても気持ちが良かったから。ボスの敵もそうじゃない奴も皆等しく殺してきた。
皆、同じく意味が無かった。
「彼奴の事もいつか撃たなきゃいけないのかな、兄弟」
「そうだね兄弟、ルールだからね」
ベットの中でお互いに話す。今日撃ち合ったピンクの猫は、僕等の友達であり敵対する陣地の役持ちでもある。仲もそれなりに良いし、お互いの陣地を行き来したりもしてる。それでも撃ち合って、殺し合わなきゃならない。どちらかが、屍になる時まで。でも其れはなんだかとても哀しい事のような、寂しい事のような気がしてならない。今までこんな気持ちになる事等無かったのに、彼が居なくなる事を考えると胸の奥に何かが突き刺さった。死ぬ時ってこんな感じなのかな、なんて。
「でも彼奴がいなくなったら詰まらないね、兄弟」
「…嫌だな」
彼が居なくなった世界を想像するだけで冷たくなって、其れでも僕等はこの世界でしか生きていけない事を知っていて。哀しくなって2人で手を繋いで、泣いた。
世界に泣いた
(070507)